手術室看護師の役割は、手術室で働いた事がある人じゃなければ分からない。
もしかしたら手術室で働いていても役割がわからいまま配置換えになってしまう人もいる。
そこで、今回は手術室看護師の役割の闇を紐解いていきたいと思います。
手術室看護師、3つの役割
手術室看護師の役割についてWEBサイトを調べると、多くのサイトでは2つの役割について解説してあります。
- 器械出し看護
- 外回り看護
確かにそうです。しかし、時代は変わりもう一つ重要な役割があるんです。それは、
『術前外来看護』
以前は外回り・器械出し看護の合間に術前訪問を行い、情報収集や患者の不安軽減を行っていました。しかし、時は流れ昨今は、手術前に患者のリスク評価を正しく行い、安全に手術・麻酔を受ける事ができるか評価した上で入院する流れに変化してきました。
その流れの中、麻酔科外来(入院前に麻酔科医が診察を行う、別名術前外来)を行う病院が増え、その外来の際、手術前の説明・情報収集を手術室看護師が共に行うようになってきたのです。
そこで誕生したのが「術前外来看護」。(詳細については後ほど)
術前外来での手術室看護師の責任は非常に大きく、経験豊かな看護師でないと十分な役割を果たす事ができないことから、手術室看護師の役割が「外回り」「器械出し」「術前外来」の3つの大きな役割にパラダイムシフトしてきているのが現状です。
看護師の花形、器械出し看護師
看護師の花形と言えば「器械出し看護」と言われていた時代がありました。
器械出し看護師は、
- 多くの手術器械を取り扱う魔術師
- 執刀医の右腕
- 先読みのスペシャリスト
などなど、手術には欠かせない重要な役割を担っていました。ただ、その役割は今も変わらずですが、手術医療の進歩と共にその役割にも若干の変化は見られます。
十数年前は皆さんもご存知の「メス・クーパー・ぺアン」などのいわゆる鋼製小物と言われる手術器械が主流でした。そのため、1回の手術で数百・数千回とも言われる器械の受け渡しを、手術の進行を妨げることなくスムーズに行う事が器械出しに求められた役割でした。
しかし、手術医療が進歩した現在、最新テクノロジーが用いられた手術器械を取り扱える知識・技術が求められる時代に変化してきました。
料理に例えて言うなら、フライパンさえ使えれば良かった過去が、現在は多くの家電調理機器が使いこなせないといけない現代に変化してきたと言うことです。
よって、器械出し看護師の役割はスムーズに器械を受け渡す時代から、ハイテク手術器械の取り扱いができる時代に変化しているのも実情です。
とは言うものの、やはりハイテク手術器械の取り扱いだけでは不十分です。いくら手術医療が進歩しようとも、器械出し看護師の基本ともいえる「器械の受け渡し」は無くなりません。
また、手術の進行状況を術野から読み取り、次に使用する手術器械をスムーズに渡すためにも、執刀医と同等レベルの解剖・手術手技の知識が必要です。言われて渡すのと、言われる前に渡すのとでは手術時間も大きく変わるため、常に術野を見て、次何をするのか考え、執刀医が欲しい器械を渡せるよう、「先読み」の技術を磨く必要があります。これが、手術室看護師として一人前になるためにかかる期間「5年」の所以です。
そして、5年も器械出しを行えば「執刀医がストレスなく手術できる」環境を提供できる器械出し看護師に成長し「執刀医の右腕」となるでしょう。
器械出し看護師は患者に直接的なケアを行うことはないが、間接ケアのスペシャリストであることに間違いはない。
患者のアドボケーター、外回り看護師
手術患者は手術室に来ると、言いたいことがあっても言えない。
「全身麻酔で眠っているからだ」
しかし、それだけではない。局所麻酔、脊椎くも膜下腔麻酔で意識がある時も、極度の緊張から想いを表出する事ができない。
だから、外回り看護師は患者のアドボケーターとなり、目・耳など五感をフルに働かせ心の声だけでなく、身体・生体モニターが発するシグナルを読み取り、患者に適した看護を提供しなければいけない。
外回り看護師として、麻酔の知識を用いた麻酔介助、手術進行に合わせた器械・物品の準備など多くの役割を担う。ただ、これらは看護的な要素より業務的な要素の方が色濃い。
やはり、外回り看護師の醍醐味といえば、
「痛い」と言われなくても、体の構造を理解し、苦痛なく行う体位固定
「寒い」と言われなくても、体温調節の仕組みを理解し、低体温にさせない体温管理
「辛い」と言われなくても、心の声を読み取りそっと手を添え、安心させる心のケア
ではないでしょうか(これだけじゃないよと異論を唱えられるかも・・・)。
これこそが、直接的ケアである。手術室に看護はないとよく聞くが、これも立派な看護だ!
情報収集・分析プロ、術前外来看護師
そして、3つ目の役割「術前外来看護」
術前外来看護師の役割は大きく分けると、
- 情報収集
- 手術に対する不安の軽減
- 手術リスクのアセスメント
何と言っても「情報収集」する能力が求められる役割である事は間違いありません。
カルテから得られる情報はもちろんの事、患者自身から情報を引き出す能力も必要になってきます。皆さんも手術室にきてからカルテに記載のない情報を患者自身から聞き慌てた事は1度や2度じゃないのでは?
患者にとっては必要ない情報でも医療者にとっては重要な情報はたくさんあります。そう言った情報を、患者から引き出す「コミュニケーションテクニック」を兼ね備えていないと術前外来看護師は勤まりません。
また、どのような情報を引き出せばいいのかも、どんな手術でどんな麻酔をかけ、どんなリスクがあるのかを理解していないと重要な情報を見落とし、術中、患者を危険な状況に陥らせてしまう可能性があります。
何事もうまくやるためには「計画7割」と言います。その計画を立案するには少しでも多くの情報が必要になるため、漏れなく情報収集する必要があります。
そして、情報収集する際、リスク評価に必要な情報だけではなく、手術に対する不安についても上手く表出させ対処することも大事です。手術患者は初めて受ける手術に対して「漠然とした不安」を抱きます。
漠然としたものを一つ一つ言語化し表出させ、解決してあげることで不安の軽減が図れます。
皆さんも初めて海外旅行に行く時、「漠然とした不安」を抱いていますよね。しかし、飛行機の乗り方、ホテルへの行き方、レストランでの注文方法などなど、事前に調べたり教えてもらったりすると、幾分不安は解消されますよね。
手術患者も一緒です。手術に対して何も分からないから不安を抱くため、術前外来看護師がその不安を解決してあげることが重要となるのです。
最後に、収集した情報を分析し外回り・器械出し看護師に伝えることで、安心・安楽そして安全な手術看護の提供に繋がります。
術前外来看護師はまだまだ新しい分野で全ての病院に普及していないのも現状です。しかし、手術室看護師の役割の一つとしてこれからの時代、スタンダードになることに間違いありません。
「術前外来看護師」は患者に直接関わる情報収集・分析のプロフェッショナル。
以上が手術室看護師3つの役割です。
最恐看護師の貯蔵庫なんて真っ赤なウソ!
手術室看護師の役割が理解できたが、やはり手術室看護師は恐いイメージがあるなぁと思ってる方もたくさんいるでしょう。たしかに中には本当に怖い人もいますが・・・
では、ナゼ恐いイメージを持ってしまうのでしょうか?
答えは簡単!
- 申し送りの時にいっぱい突っ込まれる
- 目が殺気立ってる
たったこれだけの理由で恐いイメージを持ってしまっているのではないでしょうか?
しかし、本当に恐いのではなく、いつも張り詰めた緊張感の中で看護を行っているため、恐い印象が前面に出てしまっているだけなんです。
本当はみんな優しい心を持った看護師です。他部署の看護師が手術看護をしている看護師を見る機会はほとんどありません。しかし、患者に接している姿を見てもらえれば、最恐看護師と言うイメージは絶対に払拭されるはずです。
これからも、本当の手術室看護師の姿をお伝えしていくので、「闇に包まれた手術看護」を少しでも理解していただければ嬉しく思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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