このページに辿り着いたという事は、少なからず教育に関心を示している、はたまた悩んでいる人なんでしょうね。
そんなあなたが最後まで読んだあと必ずこう思うはずです。
もう一回基本に立ち戻り教育してみるか!
そう、ここに書かれている事は教育の基本中の基本、当たり前の事が書いてあります。
教育とはそんな当たり前のことを、当たり前のように毎日行えば、誰も苦しむことなく、また、看護を嫌いになることなく、笑顔で真心こもった看護を提供する事ができる看護師が育つんです。
しかし、いつの時代になっても教育を受ける側が抱える悩みは深刻で、多くの離職者を出していることも紛れもない事実です。この現状を打破したく、あえて当たり前の事を書きます!
山本五十六って?
一度は耳にした事がある
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」
この名言を残したのは「第26代聯合艦隊司令長官 山本五十六」である事を知っている人も多いのではないでしょうか。80年以上前の偉人が残した名言が、今も脈々と受け継がれている事実は、人の心を動かすだけの深く重みがある言葉だったからではないでしょうか。
私もこの深く重みある言葉に大きな影響を受けた一人であることに間違いありません。
山本五十六という偉大な人物を語るには非常に多くの時間を要しますが、一言で言い表わすならば、
「部下思いの上司」
そんな部下思いの上司がどんな思いを込めこの言葉を残したのか、本人に聞いてみたいが、それが叶わぬ今、私なりにこの言葉の意味を解釈し、部下思いの上司が行う新人教育メソッドを考えた!
では、山本五十六式教育メソッド〜新人編〜について解説していきます。
やってみせ
教育において先輩看護師がまずやるべき事、それはお手本を『やってみせ』ること。
全ての教育は、手本を見せることから始まります。すると新人看護師は、
- へ〜、そんな風にやるんだ
- そうやればいいのか
- あ〜そういうことか
というように、これから自分が行う事を頭の中でイメージできる、実はこのイメージが大事なんです。
例えば、フランス料理「パテ・ド・カンパーニュ」を作って下さいと言われたら作れますか?
難しいですよね。しかし、作る前に写真などを見てイメージできたらどうでしょう?なんとなく作れるかなと思いますよね。看護も料理と一緒でまずイメージさせる。
イメージできないまま実践したら、必ず失敗します。新人の失敗体験は「トラウマ」になるため、必ずイメージさせ実践し「成功体験」を味わってもらうように導いて下さい。
そして『やってみせ』には「先輩に対するリスペクト」が生まれる効果もあります。
『やってみせ』られた新人看護師はおそらくこう思うでしょう、
- 先輩すごい!
- こんなスムーズにできるようになりたい!
- 勉強頑張っていつか先輩みたいになるぞ!
そう、先輩へのリスペクトが生まれるんです。リスペクトすることにより、先輩のようになりたいという目標が生まれるんです。
配属当初、右も左も分からず何をすればいいのか?どんな勉強をすればいいのか?先輩みたいにできるようになるのか?誰を頼ればいいのか?など多くの不安を抱えながらスタートします。
そんな不安な毎日ではあるが、リスペクトする先輩の姿を未来の自分に重ね合わせながら看護できるなんて幸せじゃないですか。
だから、まず『やってみせ』てあげて下さい。これが臨床教育の第一歩です。
言って聞かせて
第一歩を踏み出した後、次に行うのは「言って聞かせて」教えてあげる。
私がよく耳にする「これ勉強しといてね」と言う、人任せの無責任宿題。
おそらく何を勉強すればいいのかわからず、途方に暮れ、正解が分からぬまま意識が飛ぶまで勉強。そして、翌日、「何を勉強してきたの、ちゃんと勉強してきてって言ったでしょ」と言う、理不尽な言葉を浴びせられ撃沈する新人。
社会人だから自分で勉強するのは当たり前。それも一理あるかもしれない。
しかし、『やってみせ』た事を、共に振り返り、
「あの時は●●だったから▲▲したんだよ」
「●●のことは▲▲の本見るともっと詳しく書いてあるよ」
「●●は▲▲するとうまくやれるよ」
と言語化し、記憶の新しいうちに『言って聞かせて』、また、何をどのように学べばいいのかを伝えてあげることで、理解度は数十倍上がります。ですので、必ず『言って聞かせて』あげる時間を確保して下さい。
ただし、この『言って聞かせて』にはちょっとしたポイントがあります。
それは、手順や業務的な事を根拠に基づいて教えるだけでなく、自分の「看護観」をスパイスのように少しずつ混ぜていくことです。業務を覚えることに集中しているときは「看護」を忘れがちになってしまいます。そこで、先輩の「看護観」を聞かせることによって、無意識のうちに看護を意識した看護業務を行えるように変化していきます。ですので、
『言って聞かせて』いる時には「看護」というスパイスを少々聞かせてあげて下さい。
この少々のスパイスが、今後の看護人生に大きな影響を与えるはずですから。
させてみせ
ついに実践ですね
この実践でやりがちなミスは「放置・放任」しすぎる事です。
『やってみせ、言って聞かせて』きたから出来るでしょ、ではなく、最初の実践は必ず、温かい目で優しく包み込むように見守ってあげて下さい。
失敗しそうな時は優しく手を差しのべ、不安そうな表情をしている時は気の利いた言葉でリラックスさせる。そばにいて「頼っていいんだよ」と言葉ではなく態度示す。
こんな先輩がそばにいたらどれだけ心強いでしょう。
初めて行う看護業務には不安がつきものです。そんな不安いっぱいな状況で、
「成功に導いてくれる見守り」と、「失敗しないか目を光らせる監視」あなたならどちらを望みますか?
当然「成功に導いてくれる見守り」を望みますよね。失敗しても私が責任をとるからという大きな心で見守ってあげて下さい。すると、プレッシャーから解放され、学んできた成果を十分に発揮し必ず成功に導く事ができます。
そして、ここでも重要なポイントが。
おそらく、1回目の『させてみせ』は一緒に立ち会いますが、2回目以降は「もうできるでしょ」と言って「放置・放任」していませんか?実は一番やってはいけない事です。
どんなことでも1回やれば次からできますか?できないですよね。2回3回と経験を重ねることにより技術と知識を習得し成長していきます。
ですので、必ず2回・3回目もそばで見守り、困った時には手を差し伸べてあげて下さい。そして、終わった後、『言って聞かせて』下さい。失敗体験はまだ必要ありません。まずは成功体験をさせるために見守ってあげて下さい。
すると、成功した達成感が次回の活力に変わり、みるみる成長するスピードがアップしますから。
褒めてやらねば
そして、『させてみせ』た後は、必ずこれ!
『褒めてやらねば』
前日から寝る間も惜しんで一生懸命勉強、見えないプレッシャーと戦い続けた後に「ダメだし」されたら立ち直れないほど凹みますよね。
わざわざ凹む一言を浴びせさせなくても、褒め言葉のシャワーを浴びせてあげたほうが成長します。
ただ、喜びを噛み締めるだけでなく、「よし、次も頑張ろう」と前を向き、また一生懸命走り出しますよ。そんな新人は健気で可愛いじゃありませんか。
たった一言、あなたが褒めてあげるだけでいいんです
その一言でその努力が報われるんです。
人は動かじ
最後になりましたが、ひよこ看護師をニワトリ看護師に成長させる最終工程
「できていなかった事を指摘する」
これが一番難しいかもしれません。ただ、指摘するだけではダメです。
必ず褒めてあげた後に、できていない事を指摘し、指摘した後はどうしたらできるようになるかを一緒に考え、出た答えに対しまた褒めてあげる。そう、PNP法ですね。
PNP法とは?
別名サンドイッチ法とも言います。改善要求されると誰しも傷つきますよね。そこで指摘事項を褒め言葉の間に挟むことでショックを和らげる効果を狙った指導法
P=Positiveーまず褒める
N=Negativeー改善点などを指摘する
P=Positiveー褒めて締めくくる
これを繰り返し繰り返し行う事で、自分から答えを見つけ出す方法を考え、自らの力で改善できるだけの能力を必ず身につけます。
これこそが『人は動かじ』です
新人指導の最初は操り人形のように操ってあげればいいんです。操ってあげているうちに自ら動くようになりますから。
指導者は新人が自ら動き出すまで忍耐強く待つだけの根気が必要です。待たずして、途中で指導を放棄してしまうと新人の成長もそこで止まってしまいます。
人員不足の中、毎日の業務に追われ、十分な教育時間が確保できない現状も重々承知の上ですが、見たこともない経験した事もない看護をいきなり実践するのは新人看護師にとっては難しい事です。
看護師になりたての新人さんは夢と希望に満ち溢れた思いで入職してきます。入職当初は真っ白なキャンバスに夢や希望を描き、実現のため寝る間を惜しみ日々学習します。時には自分の不甲斐なさに押し潰されそうになりながらも、目の前にいる患者さんに理想の看護をしたいという思いで頑張ります。
それと同時に、理想とする看護を行う先輩看護師を探し、憧れを抱き、早く先輩看護師のように立派な看護師になりたいとも思っています。
そんな新人看護師の夢や希望を叶えてあげるお手伝いをできるのは貴方しかいません。
綺麗事ばかりでは看護を語る事はできませんが、ほんの少しだけ夢を叶えるお手伝いをしてあげて下さい。
最後になりますが、当たり前の事を当たり前のようにやる、それが山本五十六式教育メソッドです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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