手術はナゼ手術室で行うの?

ペリっ子なーすはじめの一歩

 手術は手術室で行うものと決まっています。

 しかし、昔はどうだったでしょう?

 この写真から見て取れるように、観客付きのスタジアム?みたいな階段教室で手術を行っていました。それから時は流れ、現代の手術室で手術を行うようになりました。ではナゼ、手術が手術室で行われるようになったのか紐解いていきたいと思います。

空気は汚い!

 普段、生活する中で空気中の汚れについて考えることなんて少ないですよね。
 ナゼかと言うと、目に見えないからです。

 空気中に浮遊しているホコリや細菌・ウイルスなどは0.1μm前後の大きさでとてもじゃないですが、肉眼で見る事はできません。そのため、空気が綺麗とか汚いとか考えることなんてないんですよね。

 しかし、空気中には想像を絶するほどの浮遊物が存在している事は紛れもない事実です。
 では、実際どれくらいの浮遊物が存在するのでしょう。下記に示すのは、病院の建物の外で空気中に含まれる浮遊微粒子数を調査した結果の一部です。

 1ft3 (一つの辺が約30cm)中に含まれる、0.3μmの浮遊微粒子はなんと1,389,904個です。
全然ピンとこないですよね。簡単に言えば、泥水くらい汚いと言う事です。そして、この中に何百・何千個と言う数の細菌・ウイルスなどの浮遊菌が存在します。おそらく、まだピンとこない方のために、

 当院の手術室内で測定した浮遊微粒子数調査の結果です。空調が正常に作動し、人の動きがなければ手術台付近の浮遊微粒子は”0”になります。これで、普段の生活圏の空気がどれくらい汚いかお分かり頂けたと思います。

空気が汚いとナゼいけない?

 「感染」を起こすからです。

 人間は皮膚のバリア機能により、空気中に存在する浮遊菌から身を守っています。しかし、手術により皮膚バリア機能が破綻すると、空気中の細菌が手術創に落下し、手術部位感染の原因となってしまいます。
 空気中には表皮ブドウ球菌など人間の皮膚に存在する常在菌やバチルスなどの環境中に存在する細菌など、手術部位感染を引き起こす細菌が無数存在します。これらの菌による感染に悩まされていた過去から、いかにして空気中に浮遊する菌を減らし、感染リスクを下げることができるのかと考えに考えた結果、現代の空調システムを兼ね備えた手術室が誕生したという訳です。

手術室は清浄度によりクラス分け

 皆さんもよく耳にする、

 「NASAクラス分類100」

 これは、米国連邦規格 Federal Standard 209で空気1立方フィート(ft3)中に含まれる 0.5μm 以上の粒子数により清浄度分類したものです。簡単に言うと、1ft3中に0.5μm 以上の粒子が100個しかないと言うことです。ちなみに「NASAクラス分類100」はバイオクリーンルームと言われる手術室の清浄度です。また、それ以外の手術室は「NASAクラス分類10000」が殆どで、まれにクラス1000の手術室があります。

 これらの手術室は、外気を取り込みHEPAフィルターで粉塵を除去し手術室内に給気、給気された空気は排気口から排気され、また、HEPAフィルターで濾過して給気するシステムを用い、常に手術室内の粉塵除去を行い浮遊菌や浮遊微粒子を除去しています。

 ちなみに、空調管理された手術室での浮遊微粒子数は上記に示した基準ですが、浮遊菌の基準は

 『1ft3中にクラス100では≦0.1個、クラス10000では≦0.5個』

 という、非常に厳しい基準となっています。

手術を手術室で行う理由

 以上のことからお分かりのように、空気中には非常に多くの浮遊菌・浮遊微粒子が存在し、それらが手術部位感染の原因となります。ですので、感染リスクを最小限にするため空気中の浮遊菌・浮遊微粒子を完璧に取り除くことができる空調設備を備えた手術室で手術を行います。

補足

 手術室清浄度分類について、現在NASAクラス分類は一般的には用いられていませんのでご注意。
 清浄度分類については少しマニアックですので、別途記事を作成しますので今回は割愛しました。

 最後までお読み頂きありがとうございました。

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